漆喰とは何か

漆喰屋根

今流行している「漆喰」

元は建物の外壁材として作られたものですが、近年ではレストラン・ホテルはもとよりご自宅の室内壁にも取り入れられている人気の素材です。

今回は、そんな漆喰とは何か、そして人を魅了してやまない漆喰の魅力やデメリット、DIYで漆喰を塗る際の注意点まで「漆喰」について丸ごとご紹介いたします。

【漆喰とは何か】

そもそも漆喰とは、石灰岩を焼いて「消石灰(しょうせっかい)」という素材にし、それを粉末状にしたものを言います。

元は瓦屋根の棟下の面戸(屋根瓦の一番上の瓦と棟の間)や鬼瓦(棟の端についている瓦)周りを接着・固定し、棟への雨水の侵入を防ぐために使われている建材です。

消石灰自体は石なので接着の機能はありません。
消石灰に水や糊やツナギになる素材を混ぜてから鏝(こて)で塗ります。
緩く練れば垂れて上手く塗れませんし、硬すぎても伸びません。
漆喰の施工は左官職人の腕が問われる施工でもありました。

外壁や内壁で良く知られている漆喰ですが、「漆喰彫刻」というジャンルがあります。
昔の日本家屋には蔵が別棟にあり、その蔵の象徴ともいえる扉の上の部分に飾り彫刻を鏝1本で仕上げるのです。
彫刻というと形のあるものから削り出していくイメージですが、漆喰彫刻は違います。
平らな面にイメージを頼りに盛り上げて作って行きます。

漆喰は五千年の歴史があり、日本だけではなく欧米諸国でも文化財として残っている建築にも使われています。

【漆喰のメリット・デメリット】

効果がたくさん知られている漆喰ですが、メリットとデメリットをまとめていきます。

<メリット>

・不燃性のため火事に強い

漆喰は年々効果する素材です。それは塗装時に混ぜた消石灰以外の成分が経年とともに揮発して消石灰の成分濃度が濃くなるためです。
日本は古来より木造建築であったため火事に弱いことが問題でしたが、仕上げに漆喰を塗ることによって、防火の効果が得られました。

・調湿機能

呼吸する壁とも表現される漆喰ですが、塗装後も吸湿をしてくれます。
しかしながら、JIS規格では建材として調湿効果が高いものを「調湿建材」と呼びますが、1㎡につき24時間で70g以上の水分を調質しないと「調湿建材」とは言えません。
漆喰は配合物や施工後の年数にもよりますが、1㎡あたり40gとそう高くはありません。

・VOC(揮発性有機化合物)の分解
VOCとはVolatile Organic Compoundsの略称で、塗料や印刷インク、接着剤や洗浄剤、ガソリン、シンナー等に含まれるトルエンやキシレン、酢酸エチルといった物質を指します。

人体には有害でアレルギーの原因となるとも言われており、一般的な建材にも多く含まれています。アトピーの他にシックハウス症候群などの原因とも考えられています。
漆喰を施した室内は、VOCを吸着・分解する効果が知られています。

・脱臭効果
漆喰はニオイの元となる成分も吸って空気を浄化してくれる作用が確認されています。
ただし、空気清浄機要らずとは言えません。
壁と接している空気を清浄にしてくれるので、室内の一部分に施しただけという程度ではあまり効果は実感しにくいかもしれません。

・デザインの自由度が高い
洋風から和風までデザインが鏝一つで自由に作れるので、少し工夫するだけでおしゃれな雰囲気になります。

<デメリット>

・施工を左官屋さんに依頼する場合は単価が高い
技術を必要として、かつ「粉」から独自の配合で練り上げる漆喰は左官の技術の粋が問われるものです。粉は先に触れた通り消石灰ですが、目に入ると失明の危険があるため粉塵を防ぐゴーグルが必須です。
技術や安全面、長く持つという点から高くなりやすい傾向にあります。
また、乾燥に時間を要するので施工期間が長引くことも費用高騰の原因になります。

・引っかいたり物をぶつけると傷になりやすい
この点は広く一般的に使われているビニールクロスでも同様なので、漆喰だからというデメリットではありません。

・独特のニオイが塗りたては気になる

人によっては漆喰特有のニオイが気になる方もいらっしゃると思います。
これは漆喰を塗る時に配合する自然由来の成分の香りです。塗りたては気になりますが換気をして漆喰が乾燥して来れば収まります。

水を弾かない

コーヒーをもって階段を上がる途中につまづいて「あ!」と思ったときには、綺麗な漆喰の白にコーヒーのシミということがあります。
漆喰は拭き取りでは汚れを落とすことが出来ません。
その代りに、代表的な方法がいくつかあります。

★消しゴム

消しゴムで表面を削る感じです。カスもまとまって綺麗に消えるのでお子様の落書きなどにもおすすめです。

★表面をやすりで削る

周囲との差が目立つ場合がありますが、塗り直す前に試したいところです。

★塗り直す

新築やリフォームで漆喰を施工してもらうと、余った漆喰を業者がくれる場合が多いです。
また、ホームセンターなどでも手に入りますので、周囲との風合いを考えながら塗り直すというのも一つの方法です。

【DIYする点の注意点】

様々な効果がある漆喰ですが、先に触れた通り左官屋さんに依頼をすると費用が高いためご自身でDIYをされる方も多いようです。
漆喰は取り扱いが左官職人でも熟練しないと難しいので、DIYをする際の注意点をご紹介します。

・粉ではなく練られている物を使う

粉は先に触れた通り失明の原因にもなりますし、昔のような土壁であれば良くつきますが今は石膏ボードが主流です。
練り上げる時の成分の配合比率が非常に難しいので、すでに練られているものを使うほうがやりやすいです。


・鏝にこだわらない

左官職人は鏝を使い慣れており、自身の手になじむ鏝を持っています。
予め練られている漆喰は柔らかいものから、練らないとやや硬めのものまで独自に配合されています。
やや硬めのものは鏝受け台に適量取り鏝で練ると塗りやすくなります。

逆に垂れるほど柔らかいものについては、鏝にこだわらず手袋をはめて手で伸ばしてから鏝で直すと綺麗に塗ることができます。

・オリジナルのデザインを楽しんで

先に触れた通り彫刻まで楽しめるのが漆喰です。
ご自身の家であれば、せっかくですから美しく塗るよりも、自然に出る模様や、デザインを楽しんで塗られてみてはいかがでしょうか。